古本のおひさま堂がゆくわよ!

子どもの本に囲まれて暮らすおひさま堂が記す、絵本と児童書の紹介・感想・覚書

戦争や平和をテーマにした絵本、おはなし会で読んだだけで満足していない?

今年は戦後70年の節目の年でもあり、戦争や平和をテーマにした絵本の問い合わせが多い。戦争や平和について考えることは大切だが、少なくとも複数を対象にした読み聞かせやおはなし会などで、絵本を通して考えを深めていくことが「容易でない」ことは理解しておいたほうがよいと思う。

 

絵本は、1人の読み手がおおぜいの聞き手を対象に読み聞かせをすることを前提に作られていない。ビッグブックなどの1部の特殊な本を除き、基本は1対1(もしくはせいぜい2~3人)で、読み手の膝の上や傍らなど双方が体温を感じられる距離で読むことが前提になっている。それは、絵本の大きさを見ればわかる。

 

その近い距離から、絵本をなかだちにしたコミュニケーションが生まれる。ついつい忘れがちであるけれど、絵本の本質はコミュニケーションなのだ。決してお話の内容を理解するために絵本を読むのではない。絵本は、教科書ではないのだから。

 

だが、大勢を対象にした読み聞かせでは、多くの場合このコミュニケーションがとれず、「お話の内容がわかった」というところで終わってしまう。戦争や平和に関する絵本だけではないが、子どもたちにとっては「悲しいお話だった」「悲惨なお話だった」というだけのことになってしまう場合が多いのだ。

 

絵本を読むことは種蒔きに過ぎない。蒔いた種をどう育てていくのかは、絵本を読んだ後にかかっている。複数を対象にした読み聞かせでは、種を蒔く以上のことはできないと思ったほうがよい。だからといって、学級会のような話し合いを提案しているわけではない。絵本を使って種を蒔くなら、その種が芽をだし大きく育つように、家庭で世話をしてほしい。

 

そんなことまで、いつもいつも「絵本を読んでくれるおばさん」任せにすることは、できないはずなんだよね…

 

 

昆虫ブーム再来?でてこい、昆虫少年・少女たち!

幻冬舎発行の写真集『きらめく甲虫』が、売れています。

幻冬舎によれば「甲虫の中でもとくに金属光沢が美しいもの、珍しい模様を背負っているもの、色合いが芸術的なものを集めた」写真集とのことで、昆虫好きでなくてもその輝くばかりの美しさには目を奪われます。

きらめく甲虫

同じ作者の『ツノゼミ ありえない虫』なども話題になっていて、本の世界はちょっとした昆虫ブーム到来です。

 

また、ジャポニカ学習帳45周年記念企画で、歴代ジャポニカ学習帳の人気投票が行われ、7月7日にAmazonにおいてその結果が発表されたが、年代別の人気TOP3のうち実に80%以上が昆虫を表紙とするものでした。

※ あなたの1票が復刻を決める! 歴代ジャポニカ学習帳人気投票 | Amazon.co.jp

 

最近は、虫を苦手に思う子も多いと聞いていたので、ちょっと意外に感じましたが、実際は大人が熱くなっているということなのでしょう。ならば、時は今、この夏休みに、その熱い思いを子どもたちに伝えてほしいなと思います。

 

上述の『きらめく甲虫』などは、親子一緒に楽しめると思いますが、子どもの興味を引き出すにはやはり絵本が役立つでしょう。手前味噌で恐縮ですが、AllAboutで最近次の3冊をご紹介しました。

(以上は、幼稚園・保育園くらいのお子さんから!)

 

また、小学生にはやはり『ファーブル昆虫記』が欠かせませんね。最近では集英社奥本大三郎さんの全集が定番となっていますが、古本屋的には偕成社の『少年少女ファーブル昆虫記全6巻』もおすすめです。(本日現在、おひさま堂に在庫有り 6巻セットで1800円です。売り切れご容赦)

 

当時(1960年代)昆虫学の権威であった古川晴男博士が情熱を注いで訳した『ファーブル昆虫記』は、何度読んでも、大人でも、女子でも、新たな発見があって面白い。

 

この夏、絵本や大人とのかかわりの中で昆虫の面白さに目覚め、虫かごと虫捕り網をもって駆けまわる子が増えたらうれしい……なんて思うのは、やはり年をとったのでしょうか? 夏は特に、本も読んでほしいけれど、戸外で思う存分遊んでほしいものです。もちろん、受験が……とか、塾に行く時間が……てな本音も、経験からよくわかるんですけどね。

真髄は最後の10ページに!『ユリシーズ・ムーアと時の扉』

本好きとは思っているが、正直 児童書でも、読了まで気力が続かずに挫折してしまう本がないわけではない。

読んでいる時の自身の体調など、本の内容に原因があるわけではない場合もあるが、そういう本は何度読み直してみても同じ結果になることが多いように思う。きっと相性が悪いのだね。でも、辛抱して読んだその先に思いがけない結末に出会った時の嬉しさは格別だ。『ユリシーズ・ムーアと時の扉』は、そんな類の本かもしれない。

 さて、『ユリシーズ・ムーアと時の扉』はいろいろな意味で驚かされる本である。

ユリシーズ・ムーアと時の扉 (ユリシーズ・ムーア 1)

まず、そのデザインにビックリだ。カバーは流行のファンタジー作品のそれだが、カバーを外すとそこには全く別のデザインが現れる。いかにも古書という雰囲気の表紙は、それだけで本好きを物語に誘う。その上、あろうことか、物語はこの本の出版社である学研パブリッシング宛の1通のE-メールから始まるのだ。

古書とE-メール、似つかない2つのアイテムが、読者をファンタジーの世界に一気に取り込んでしまう。

 読者は、この本に著者名が記載されていないことに気付いただろうか。だれが書いたものなのか? メールを送ってきた人の創作なのか? その1点だけでもワクワク感を高めてくれる。

 主人公が引っ越してきた屋敷の前の持ち主は、得体のしれない謎多き人物。その人物が残したと思われる古代文字で書かれたメモを発端に主人公たちの冒険が始まる。

いかにも怪しげな人物や何かの伏線と思われる出来事の数々に、「先が読めちゃうかなあ……」と思っていたら、意外なラストにやられたあ! そう、このお話の真髄はラスト10ページにあるのだ。本を読みなれた人が「たぶん〇〇ね!」などとわけしり顔で想像するそのさらに上を行く展開が最後に待っている。最後の大きな驚きを楽しみにしながら、読んでいただきたい。

 『ユリシーズ・ムーアと時の扉』は、「ユリシーズ・ムーア」シリーズの第1作である。時の扉を最後まで読んだ人は、きっと次作を読まずにはいられないだろう。第1作であると同時にシリーズの序章としての役割も充分果たしているのだろうと思う。私も、さっそく図書館で第2作『ユリシーズ・ムーアとなぞの地図』を借りた。

 やや冗長に思えた第1作の出だしに比べ、第2作は最初から物語が動いていく! こちらは、読後にまた報告しよう……。

 ※おひさま堂に現在 在庫有り⇒『ユリシーズ・ムーアと時の扉』

(在庫がなくなると表示されません。悪しからず。)

 

いざ、ファンタージエンへ! 旅立ちの日

旅立ちの日とは、また大袈裟なと思いつつ、ブログを再開することにしました。

色々と紆余曲折があって、過去のブログはすべて閉鎖しての再スタートとなります。

 

少しは皆さんにお読みいただける記事が書けるか否か、いささか心もとない次第ですが、よろしくお付き合いください。

 

さて、児童文学がお好きな方には説明の必要もありませんが、ファンタージエンとはミヒャエル・エンデの小説『はてしない物語』に登場する本の中の国名です。『はてしない物語』が日本で発売されたのは1982年ですから、私は充分すぎるほど大人になってしまっていました。なぜもっと幼い時にこの物語が描かれなかったのかと、恨めしく思った記憶があります。

 

主人公が本の中へ入っていくという趣向も、物語に登場する書物と全く同じ装丁の本も、私を夢中にさせないわけがないという代物でした。あかね色の布に施された金箔の美しさは、持っているだけでドキドキしたものです。

 

この本との出会いが、私の目を児童文学に向けさせ、ひいては古本屋を始めるまでの道筋につながったと思っています。その物語ゆかりの名前をブログ名に借りました。

 

毎日少しずつ、子どもの本とのつながりを記していきたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)

はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)