古本のおひさま堂がゆくわよ!

子どもの本に囲まれて暮らすおひさま堂が記す、絵本と児童書の紹介・感想・覚書

肩の力を抜いて読む反戦絵本『キンコンカンせんそう』

前回の記事を受けて、家庭でじっくり読んでいただきたい「平和や戦争」をテーマにした絵本を何冊か続けて紹介したく思う。

 

最初になにをとりあげようかと迷ったが、『青矢号―おもちゃの夜行列車 (岩波少年文庫)』や『チポリーノの冒険 (岩波少年文庫)』を書いたジャンニ・ロダーリの反戦絵本『キンコンカンせんそう (講談社の翻訳絵本)』はどうだろうか。

キンコンカンせんそう (講談社の翻訳絵本)

「そのころは みんな せんそうをやっていた」の一文から、この物語は始まる。いつ、どこともわからぬ場所のお話。まるで「むかしむかし あるところに」で始まる昔話のようだが、いつ、どこともわからぬ場所のお話は、いつどこで起こってもおかしくない話なのかもしれない。

 

とにかく、みんなが戦争をやっていた時代のこと、戦争が長引きいつ終わるともわからぬ中、武器をつくる金属が足りなくなってしまった。そのとき、軍部のトップがあることを思いついた。教会や学校に残っている鐘を集めて武器を作ろうというのだ。日本の戦時中も、国家総動員法に基づいて金属供出が行われていたと聞く。そんな史実もあるのだから、絵本の中の信じられないようなお話も、作り話と一笑に付すことはできないのかもしれないと、ちょっと背中がゾクリとする。

 

さてお話に戻って、軍の大将は、国中の残っている鐘を集め大砲を作った。そして、これまで見たこともないほど大きな大砲が出来上がった。いよいよ、その大砲をぶっぱなすときがきたのだ! ところがそのとき、大将の予想だにしない出来事が起こる……。

 

予想だにしないとは書いたものの、勘の鋭い読者には何が起こるかわかってしまいそうだ。それもきっと、作者の想定内のことだろう。青矢号やチポリーノと同様に、随所にユーモアと風刺が効いていて、最後までドキドキしながらお話を楽しめる。結末は、読者によって様々な解釈ができそうで、意味深だ。

 

この絵本で、ひとつ忘れてならないのは邦訳を担当したアーサー・ビナードの存在だ。あいにく私はイタリア語も読めないので、原作の雰囲気を感じることができないのだが、この絵本の日本語は重すぎず、軽すぎず、小さな子どもたちに読んであげるのにちょうどよいように思う。

 

反戦という重いテーマを扱いながらも、反戦絵本だからと気合を入れて読みたい大人たちに、「まあ、まあ、そんなに気張らずに……」とでも言っているような訳である。詩人の言葉は、考えられ、練られ、そぎ落とし過ぎることなく、適度な無駄(=余裕ということか)も感じさせる。肩の力を抜いて何度も読みたい反戦絵本である。