古本のおひさま堂がゆくわよ!

子どもの本に囲まれて暮らすおひさま堂が記す、絵本と児童書の紹介・感想・覚書

広島の語り部たちがいつもINGで語り続ける絵本 『さがしています』

前回の『キンコンカンせんそう (講談社の翻訳絵本)』に続けて、アーサー・ビナード氏の絵本を紹介することにした。

 

さがしています (単行本絵本)

さがしています (単行本絵本)

登場するのは、広島平和記念資料館所蔵が所蔵する原爆投下時の遺品である。これは、それらの遺品が語り部となって、1945年8月6日8時10分の広島を語る写真絵本である。

刊行されたのは2012年7月だ。アメリカ生まれの詩人・アーサービナード氏が、これまでのどの戦争絵本にもない独自の視点で、語り部たちの言葉を通訳していく。

 

語り部たちは それぞれ、自分にとってかけがえのない大切な者(時にはモノ)を探している。

 

たとえば、表紙のカギがさがしているのは、自分たちの「やくめ」だ。彼らはアメリカ人捕虜を閉じ込めていた部屋のカギである。あの日、閉じ込められた兵隊も、閉じ込めた兵隊も、一瞬にして同じように消えてしまった。人を閉じ込めてなんになるのか? 閉じ込めなければいけないのはウランじゃないか? カギたちのやくめをさがす旅は今も続いているのだ。

 

レイコちゃんのお弁当箱が、さがしているのは彼女の「いただきます」の声である。お弁当の中身を守ろうとしてひしゃげたお弁当箱。中に滲みてきたほうしゃのうの精でもちろんご飯は食べられない。だが彼はレイコちゃんが言えなかった「いただきます」のひと言を今も探し続けている。

 

恥ずかしいことだが、何も知らず、何もわからぬ、私などが戦争絵本の紹介をしたところで、おそらく芥子粒ほどの役にもたつまい。だがこの絵本は、ページをめくるたびに静かな語り部たちの言葉が、心に染み入ってくる。ページをめくるたびに、厭戦感がじわりじわりと広がっていく。その感覚は、声高に叫ぶ「反戦スローガン」を聞いた時よりもずっと現実感のあるものだった。

 

きっと、名うてのコピーライターたちが束になってかかっていっても太刀打ちできない言葉の重み、そして歴史の真実。せめて、さがしつづけるモノたちからの言葉を真摯に受け止め、平和を人任せにしないでいきたいとあらためて思う。